2007年2月18日
「品格」
今週は、ちょっと固い話です。また私のオピニオンには同意できないという人もいると思いますが、最近こちらにある北米毎日新聞に掲載された記事を見て、どうも、合点がいかないと思って、書くことにしました。
品格という言葉は、昨年日本で「流行語大賞」に入ったほど流行したようですが、この語を流行らせた御茶ノ水大の藤原正彦教授の指摘のように、卑怯な人は品格を疑われるでしょう。
世の中の人はどういう風に理解するのか分かりませんが、最近日系三世のワタダ中尉が、イラクへの派遣を拒否したということで、軍法会議にかけられると言うニュースを知りました。これが冒頭に記した、北米毎日新聞に掲載された記事のことです。それによれば「イラクでの戦争は不法であると感じていた。派遣拒否以外に選択の余地はなかった」ということらしいのですが、私はこれは卑怯だと感じます。
アメリカは選挙でブッシュ大統領を選出したのです。軍隊は徴兵ではなく、志願制です。仮にその政策に問題があるにせよ、それはアメリカの選択です。民主主義は完全な制度ではないにせよ、よりましな制度だと言ったのは、チャーチルでした。この点、日本の戦前とは違います。あの頃は、普通選挙ではありませんでしたし、日本の軍隊は徴兵制でした。
しかし職業軍人として禄を食み、これまで安全なところで生活してきたワタダ中尉は、「一旦緩急あれば」ではないとしても、アメリカの政府の方針、アメリカの軍隊の方針と命令に際して、突然自分の判断で「不法だから行かない」ではその品格が問われると思うのです。
重ねて言うのですが、アメリカの軍隊は、徴兵制ではないのです。彼は我が家のルークより若いのです。あの時代、我が家のルークも海軍を志願しかかったことがありました。もしそこで過ごすなら、奨学金などさまざまなベネフィットがあったのです。しかしルークは海軍に行くことを止めました。ですから、今でも、苦労しながら大学の時の借金を返しています。
28歳のワタダ中尉は、政府の方針に従えないかもしれないというのなら、初めから軍隊に入らない選択もあったはずです。軍隊に指揮権をもつ大統領に問題があるなら、選挙で落とせばよいのです。殆どの軍人は、中には仮に問題を感じていた人がいたとしても、命令には従って派遣されたのです。軍隊でこういう命令に不服従の軍人がいたら、軍隊は機能しないでしょう。非常に大きな問題です。今回は、日本の自衛隊員も派遣されました。それの是非については日本側の判断に任せましょう。しかし日本の自衛隊員でもそうですが、命令に不服従な隊員がいたら日本の人はどう思うでしょう。日本共産党の人たちは、あの戦争に反対して、あの当時地下にもぐりました。あれのほうが筋が通っています。それをいい時だけ軍隊で過ごして、都合が悪くなったら(そう受け取られても仕方がありません。)「行かない」と言うのは、筋が通りません。
私たちの知り合いの日本の方の息子さんが警察官になりました。そして結婚したアメリカ人女性は、「あなた、警察官は危ないから、仕事を変えてください」と言いました。そして事実、その日系アメリカンの彼は警察官を辞めました。この決断が妥当かどうかはともかく、筋が通っています。「危険だと思うから辞めた」のであって、「危険が迫ってきたから辞めた」ではないのです。警察官になるのは義務ではないから、辞めるのも自由です。私が陪臣員だったら、別に裁判に出ずともワタダ中尉については必ず有罪のほうに評決するでしょう。卑怯者だからです。
先週のバレンタイン・デイの日、日本の一人の巡査部長が、自殺志願の女性を救うとき、列車にはねられ殉職しました。女性は助かったそうです。今回のワタダ中尉の品格と、この名もない巡査部長の品格とは、ずいぶん違うと思います。
日系人で、もう一人恥ずかしいと感じた人は、ノーマン・ミネタというかつてサンホゼの市長で、ブッシュ政権では、交通長官になった人です。サンホゼ国際空港は、彼の名を冠して ノーマン・ミネタ空港と言います。どうしてアメリカの人たちは、こういう人物に敬意を払うのか今もって分かりません。共和党のブッシュ政権は、民主党との融和をもくろんで、民主党員のミネタ氏を起用したのでしょうが、それを受けるという気持ちが分かりません。
彼はかつてサンホゼ選出の下院議員だった時、任期を余して突然辞任し、サンホゼの隣のマウンテンビューという町にあるロッキード社の副社長に抜擢されました。私はこの時の驚きを今も覚えています。そしてこの問題に関して今尚、私を納得させるだけの説明を得ておりません。これも卑怯だと感じています。選挙で選ばれたのなら、選挙民に対して責任があると、少なくとも日本人の私は考えます。それを任期の途中で辞めて、ロッキード社の副社長に納まるというのは、どういう了見でしょう。かんぐりとしては、そのポジションのほうが美味しかったからでしょう。この裏切り行為に、選挙民に対してどういう言い訳をするのでしょう。途中で下院議員が務められなくなったということ、例えば病気とか、身体に問題が起きたとか、・・・これは辞任にしても理解できます。けれどもそれなら、ロッキード社の副社長になどやれるはずがありません。下院議員は自分でなりたくてなったのではありません。選挙されてなったのです。選挙民に対して、少なくとも任期を勤める義務があると、私は思います。お金のために選挙民を裏切ったと、私には思えるのです。
フジモリ氏がペルーの大統領だったころ、日本大使館がテロ・グループに乗っ取られたことがありました。その時、人質になった人たちの中に、日本人の宣教師がおりました。ところがテロ・グループが、一部の人質を解放する段になって、その先に解放された人質グループの中に、その宣教師がいたので、「この態度はいかがなものか」とリバイバル新聞が、コメントしていたのを思い出します。私もこの時は、「ちょっと違うのじゃないかなあ」と思いました。
ノーマン・ミネタ氏は、民主党員でありながら、その後、ロッキードの副社長から、ブッシュ政権の交通省という甘い汁にも、何の抵抗もなく乗っかるという、武士道を知る日本人には信じられないハレンチをやります。これも品格がないと、私は考えます。名誉のために、党籍など関係ないと考えたのでしょうか? 安倍政権のポストに、民主党の菅さんが入る感覚です。武士道は、別に日本特有の精神ではありません。それは聖書の教える名誉とか尊厳という精神です。
主にあって、品格のある人とは、パウロが「愛は寛容であり、愛は親切です。また人をねたみません。愛は自慢せず、高慢になりません。礼儀に反することをせず、自分の利益を求めず(1コリント13:4-5)」と言う中にもあるように、礼に反したことをしないものだと思います。このコラムと共に、今週の説教も読んでください。
今日のコラムには、ことに日本の皆さんには、「パスター・エイブ、私はあなたに同意できない」という方がおられるかもしれません。御意見をお待ちしています。あなたのご意見は、同意を得ないで、公にすることはありませんので、どうぞご自由に意見を送ってください。