2007年7月8日
さだまさしさん
私たちがアメリカにやって来たのは、あのさだまさしさんが『関白宣言』を流行らせた翌年だったからというわけではありませんが、私たち夫婦は、そろって彼の大ファンです。彼のほうが少し年齢が下なので、彼の歌については、グレープの時代からよく知っています。一時、中国で映画を撮る企画をして、二十億とかの大借金を抱えて破産しかけたことがありましたが、それ以来、ものすごい数のコンサートを開いて、あの苦難を乗り切ってしまったのには、本当に驚きました。
彼は一流のバイオリニスト、ギタリスト、シンガーソングライターであるだけでなく、最近は、著述家としても、小説だの評論などを書いています。その彼が、昨年出した本に、『本気でいいたいことがある』があります。5月に日本に行った時に、買いました。その中に、『関白宣言』のことが書いてありました。・・・・・・
この歌詞が、性差別的だと批判した人がありました。「俺より先に寝るな」だの、「メシはうまく作れ」といった命令長の歌詞が気に障ると言う人があったのです。でも僕はこの唄が女性蔑視とは全く思わない。優しいプロポーズソングのつもりで書きました。・・・・
そう、これは実の愛情の「質」の問題なのですね。お互いがお互いを大切にするなら、自分の出来る限りのことを相手のためにしてやりたい、と思うのが普通だと被います。「先に寝るな、後に起きるな、メシはうまく作れ」などという具体的で些末なことは、この唄にとっても生活上でも、ちっとも大切なことではないのです。問題は相手に心からそうしてやりたいか、また相手からそうしてもらえる資格が自分にあるのか、といった心構えを問うているのです。 さだまさし・「本気でいいたいことがある」新潮新書 p.44-46
と書いています。実はこの『関白宣言』が流行った頃、私は日本にいて、ある新聞を編集しておりました。「チャペル・ニュース」という名前の新聞ですが、その中でこの歌に対する論評を書いた覚えがあります。まったくこの本のさださんと同じようなスタンスで書いたと記憶しています。(残念ながら、そのコピーは、ここに持ち合わせていません。)そして、この歌の最後は、これは私自身の希望として、先に死でいく自分が、家内伝えたいメッセージになっているのです。私は、教会でもそういうことを話すので、みなさん大笑いしますが、真面目な話、本気でそう思っています。最近の若い方たちは、この愛情溢れる夫婦の関係に関する唄をご存知ないでしょうから、全歌詞を載せます。
「関白宣言」
お前を嫁にもらう前に 言っておきたい事がある
かなりきびしい話もするが 俺の本音を聴いておけ
俺より先に寝てはいけない 俺より後に起きてもいけない
めしは上手く作れ いつもきれいでいろ
できる範囲で かまわないから
忘れてくれるな 仕事もできない男に
家庭を守れる はずなどないってことを
お前にはお前しか できないことがあるから
それ以外は口出しせず 黙って俺についてこい
お前の親と俺の親と どちらも同じだ大切にしろ
姑小姑かしこくこなせ たやすいはずだ愛すればいい
人の影口言うな聞くな それからつまらぬ嫉妬はするな
俺は浮気はしない たぶんしないと思う
しないんじゃないかな ま、ちょっと覚悟はしておけ
しあわせは二人で 育てるもので
どちらかが苦労して つくろうものではないはず
お前は俺のところへ 家を捨てて来るのだから
帰る場所はないと思え これから俺がお前の家
子供が育って年をとったら 俺より先に死んではいけない
例えばわずか一日でもいい 俺より早く逝ってはいけない
何もいらない俺の手を握り 涙のしずくふたつ以上こぼせ
お前のおかげで いい人生だったと
俺が言うから 必ず言うから
忘れてくれるな 俺の愛する女は
愛する女は 生涯お前ひとり
忘れてくれるな 俺の愛する女は
愛する女は 生涯お前ただひとり
さださんの歌は、彼自身が若い頃バイオリンで身を立てようとしていたこともあって、音楽的基礎が非常にしっかりしているばかりか、そのセンスを持って習得したギターの上手いこと、ことにそのアルペジオ奏法は、まず分散したギターの各音が、全然かすれたりしないのです。もしかしたら、あれはレコーディングの時だけかなと思って、ミュージック・フェアーに出ていたさださんを録画してもらって、日本から送ってもらいました。(かなりクレージーですよね。それでも牧師です。)そして注意深く見ていましたが、やはりレコーディングと同じ、まったくかすれもありません。鮮明にそして正確なリズムで、アルペジオを刻むのです。
この本の中に、彼自身が17歳でバイオリニストになる道を諦め、ギターを持った当時の話があります。
下宿のお兄さんが持っていたギターを借りた。…・僕はヴァイオリンをやっていたせいで絶対音があったから、本に書いてある通りにやってみたら、自分で調弦も出来た。またヴァイオリンで鍛えた指があるから、初心者がつまずきがちな大バレーコード“F”なんてコードも、いきなりクリヤな音で弾けてしまったんです。 (p.202)
ギターを持った最初の日から、大バレーコード“F”が、かすれないなんて、やっぱり違う人は、最初から違うのですね。 彼はまた詩人です。どの詩にも、メッセージがあります。 ただ、彼が一生懸命捜しているのが神ですが、第四章に「神さまは本当にいますか?と聞かれたら」(p.73 )という表題で出てきています。この時点でさださんは、まだ活ける真の神に出遭ってはいません。ですから、「人間が生き返るか」という点でも、「宗教まがいの詐欺」(p.19 )というような捉え方になってしまうのです。勿論、私たちキリスト者は、蘇生ではなく復活という意味で、生き返ることを信じています。彼が復活なさった方を知っていたら、「第一章 『生命』は誰のものか」の書き方は当然のことながら、随分違っていたでしょう。
彼が、いつか真の活ける神に出遭って、それから書かれた彼の歌が聞いてみたいものです。しかし、それでも私たち夫婦は、「日本へ行ったら、いつかさださんのコンサートを聴きたい」と言っております。果たして、いつのことになるやら。